Traum





「起きて、梨沙子」



眩しい朝日。
あたしを呼ぶ声。

重いまぶたをゆっくり、ゆっくり、開いていく…



「おはよ」

「ん…?」


陽の光がまぶしくて、顔が見えない。
少しずつ近づいてくる。

この髪、この匂い…



「みや…?」
まさかと思って目をこする。
けれど、そこには確かに愛しい人がいて。


「起きて顔洗ってきて。朝ごはんできたよ」


みやはいつもと変わらない笑顔でそう言った。
なにがなんだか分からないあたしはまわりを見まわす。
初めて見る部屋。初めて見るベッド。
なのに、どこか懐かしい…初めてじゃない?
あたし前にもどこかで…

とりあえずフローリングの床に降り立つ。
洗面所もリビングの場所も、なぜかきちんと知っている。

鏡にうつったあたしは、まだ少しだけ寝ぼけ顔。
視界のはじにうつった2本の色違いのハブラシを見て、状況を理解していないのになんだか顔が熱くなった。


リビングに行くとテーブルにはすでに朝食が用意されていた。



「もう、まだ寝ぼけてるの?早く座って」


エプロンをつけたみやがあたしに座るよううながす。

…みや、可愛すぎるよ。
じゃなくって。


「ねえ、みや。何でここにいるの?…ってゆうか、ここどこ?」


あたしの問いかけにみやは振り向いてふふっと笑う。


「なにゆってるの?もう何年も前から一緒に暮らしてるじゃない」


え…?みやと?何年も前から…!?
うーん言われてみればそんなような気も…
ううん、しなしない。
一緒に暮らしてるなんて…そりゃ、想像したことぐらいはあるけど。


「はい。熱いから気をつけてね」
そう言いながらみやがあたしに渡したのはコーヒーだった。

コーヒー?ん?
疑問に思いつつも手に取るあたし。
そういえば、さっきからなんか変だ。

あたし、コーヒー飲めたっけ?飲めないよ。
それにみやも飲めないの知ってるよね?
ていうか…みやって、あんなに胸大きかったっけ?

やっぱり変だ。
なんか、おかしいぞ。


「梨沙子?飲まないの?」

「え?あ、うん…ちょっと熱くて」


ちがうちがう。
あたしはコーヒーなんて飲めない。

あたしもどうして、それを言わないの?


「じゃあ私が冷ましてあげるね」


みやはなんだか妖しく笑って、あたしの手からカップを奪いとった。

みやもなんか変だ。
ってか、いつものみやだったら自分からこんなこと言わないし。


「えっ、そんな、いいよ」

「いいからいいから」


みやは何を思ったのかコーヒーを一口、
少しだけ熱そうに口に含んでそのままあたしに口づけてきた。


「んっ…!?」


みやの舌があたしの口を割って入ってくる。
それにつづいて、さっきみやの口に入ったはずのコーヒーがあたしの口に流れ込んでくる。

ちがうちがうちがう!
みやはこんな大胆なことしない!
ってゆうかあたしはコーヒー飲めないってば!
苦いし熱いし、なぜか身動きが取れない。


これはきっと……








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