○ Don't you know? ○
あれ?
違和感を感じたのは、楽しそうに話すちぃとみやを見た時だった。
もちろん、2人が親しげにしていることに違和感を覚えたんじゃない。
というかはっきり言えば2人は直接関係がない。
どこだろ…
いつも彼女の近くにいるのに。
自然と首をふる。
そして見つけた、困った横顔。
いた…!
「梨沙子」
肩をたたくと、泣き出しそうな瞳がこっちを向いた。
「くまいちゃん…」
「なにそれ、宿題?」
私の言葉に梨沙子はこくこく頷く。
梨沙子の手元にあるプリントを手にとって見てみると、
昨年の今頃私が習ったような数式だった。
すると、問題文だけ書かれたノートをいきなり突き出される。
「教えて!くまいちょー」
「え?あ、うん」
今にも泣き出しそうな梨沙子の訴えに私は無意識に頷いてた。
っていっても、別にイヤなわけでもないし。
「ほんとうに!?」
「う、うん…私でいいなら」
やったー!ありがとう!
そう言って抱きついてくる梨沙子。
本当に妹みたいで可愛いなぁなんて思うけど、
ちょっと目立ちすぎててまわりの視線が痛い。
あーほら…とくにちぃとみや。
「うん、じゃ、ほらやろっか」
やんわりと梨沙子の腕をほどく。
私の苦悩なんてちっとも気にせず、
なぜか楽しそうに先ほどのプリントをもう一度見せてきた。
ってゆうか、え?
「もしかして、これ…全部?」
「ちゃんと全部見たんだよ!ちゃんと考えたの!…でもわかんないんだもん」
まさかとは思ったけど、あの梨沙子だもんね。
ちょっとあなどってたなぁ…
でも私だってそんなに成績よくないけどさ、
この最初の方の基本A問題くらいはできたよ?
そんな私の心の声を知ってか知らずか、
梨沙子は不安そうな顔して服の袖を引っ張ってきた。
「だめ?」
「いやっだめじゃないけど…」
突然の上目遣いに息がつまる。
言葉を捜すのに夢中になって、あわてて視線を外した。
「あ、今度の休みの日にうち来てやらない?」
「ほんとに!?いいの!?」
「どっちにしろ、今ちょっとやって終わる感じじゃないし…
どうせなら私も復習がてらしっかりやりたいし」
「もーくまいちょー大好きだよ!」
私の言葉にぴょんぴょん跳ねる梨沙子。
喜んだ勢いでみやのところに駆けていってしまった。
心臓の鼓動がだんだんとおさまっていく。
ゆるやかな曲線を描いて、気持ちが落ちていく。
さっきは違和感なんてもの感じたのに、
今、いつも通りにみやに抱きついてる梨沙子を見ているとなんだか伏せ目がちになりそう。
つい今まで私の腕の中にあった温もり。
なんだか、少しだけさみしい。
けれど、ちぃのふてくされた顔が視界のはじにうつったから、
私はうつむかず笑顔え近付いていった。
なんか、ずるいなぁ。
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